現代の住宅にとって、「断熱」という機能は非常に重要な位置を占めています。
それは「夏涼しくて、冬暖かい」住まいを実現する上で、不可欠なものだからです。
「断熱」は住宅において、どのような意味があるのでしょうか?
短く言えば、「夏涼しくて、冬暖かい」住まいを実現する意味があります。快適に過ごしやすい住宅が建築できるという意味です。
細かく言えば、「外気温の影響を和らげて、エネルギー使用の無駄を元(住宅そのもの)から断ち、健康的で快適な住環境を手に入れられる」という意味があります。
そもそも「断熱」とはどのような意味でしょうか?
それは字のごとく「熱」を「断」つ、という意味です。
かつての住宅は、建売(分譲)住宅でも、注文住宅でも、あまり断熱化がなされていませんでした。熱が遮断されていないので、外が寒いと、家のなかも寒いということになります。
なので、冬場などは、部屋を暖房でガンガン暖めなければならないです。風呂場に行けば、凍えるような寒さです。俗に言う「ヒートショック」が起こり、お年を召された方は脳溢血などを引き起こし、ひどい方は亡くなられるケースもあります。
夏場は、外が暑いので、部屋も暑い。
クーラーでガンガン冷やさなければなりません。
これが「断熱」されるとどうなるでしょうか?
「断熱」しますと、熱が遮断されるので、外が寒くても、家のなかは暖かいです。外が暑くても、家のなかは涼しいです。家全体が温度差があまりないため、ヒートショックも起こりません。
これが「断熱」の意味です。
「断熱」は、節電や地球温暖化対策にもつながる
さらに住宅の「断熱」化は、節電や地球温暖化対策にもつながります。
家庭からの二酸化炭素発生の原因は、一番が電気です。ちなみに二番はガソリンです。
一番の電気で、もっとも電気を使うのが「エアコン」です。25.2%を占めているそうです。
エアコンは温度調節する家電です。
ですから、断熱がきちんとされた住宅であれば、そこまでエアコンを使用しなくてもよくなります。それが節電や二酸化炭素発生を減らす効果があるのです。さらに、節電できれば、生活費も減ります。光熱費が下がりますので。
ちなみに、家庭で電気を使うものの二番目は「冷蔵庫」です。
旧式の冷蔵庫は、新型冷蔵庫の2倍は電気を使うそうです。もし、家庭の冷蔵庫が旧式であれば、新型に変えることで、電気代負担が半分になる可能性があります。
あとは、照明、テレビが電気消費が大きいです。
住宅における「断熱」の意味についてはご理解いただけたと思います。
快適な住環境は誰しもほしいものです。
「夏涼しくて、冬暖かい家」です。
それを実現するには、「住宅の断熱化」が重要です。
具体的に「住宅の断熱化」とは、どういう意味なのでしょうか?
「住宅の断熱化」とは、どういう意味なのでしょうか?
「住宅の断熱化」とは熱を断つという意味です。
そもそも熱は移動します。住宅における熱は冬は「逃げて」、夏は「入って」きます。
断熱化されていない住宅だと、冬に暖房をかけた後、切って数時間経つと、また寒い状態に戻っています。これは熱が逃げたわけです。逆も同じ。
夏に冷房をかけた後、切って数時間経つと、また暑い状態に戻ります。これは熱が入ってきたわけです。
これらを断つのが、「断熱」です。
熱の移動を断つことにより、冬は熱が逃げずに暖かい家になります。夏は熱が入らずに涼しい家になります。
住宅の断熱化におけるポイント
住宅の断熱化におけるポイントがあります。それは大きく3つあります。
- 躯体全体を断熱する
- 開口部を断熱する
- 開口部の日射遮蔽する
1.躯体全体を断熱する
住宅全体を躯体と言います。
熱は躯体を通して室内に移動します。
ですから、躯体全体を断熱しなければなりません。
2.開口部を断熱する
開口部とは、字の通り、外に開いた口の部分で、おおむね窓、ドアです。
一般に開口部は躯体よりも7から12倍も熱を通しやすいです。
そのため、この開口部の断熱が断熱性能を大きく左右します。
3.開口部の日射遮蔽する
開口部からは、熱が移動してしまうのと同時に太陽の光が入ってきます。
この熱が日射熱です。
夏は日射熱によって室温が上昇します。
太陽熱が建物内に入ることで、室温が上がるわけです。
断熱するにはこれを小さくする必要があります。
これを日射遮蔽といいます。日射侵入を減らすことで、日射熱を減らします。
以上が「住宅の断熱化」です。
これらを実現することで、快適なマイホームが実現します。
ただ、「言うは易し、行うは難し」です。
簡単に「住宅の断熱化」は実現しません。
では、どうすれば、「住宅の断熱化」が実現するでしょうか。
住宅の断熱化を実現する3つのポイント
- 断熱化
- 気密化
- 夏期の暑さ対策
1.断熱化
断熱化は大きく2つです。
- 躯体に適切な断熱材を使うこと
- 断熱性の高い開口部材を使うこと
断熱施工についても、断熱材を床・壁・天井などに適切に施工することが重要です。
ここで手抜きをすると、せっかくの断熱材の効果が減ってしまいます。意味のないことになりかねません。
また、開口部材にも断熱性の高いものを使用します。たとえば、窓ガラスに複層ガラスなどの熱を伝えにくいものを使用します。
2.気密化
せっかく断熱をきちんとした家をつくっても、気密化がなされていなければ、価値は下がります。
気密化とは、住宅の隙間をなくすことです。密閉性を高め、空気の出入りや熱の移動を減らします。
気密化がなされていない場合、隙間風や熱が移動してしまうことになります。別のところで詳述しますが、結露を引き起こす要因となりかねません。
気密化のためには、適切な気密施工を行うことが大事です。また、気密材を用いて取合部や開口部まわりの隙間をふさぐことが大事です。
3.夏期の暑さ対策
夏期の暑さは、単に気温が高いからだけではありません。
窓から日差しが差し込むことで、日射が室内に侵入し、熱が入るのです。
そこで、夏期に窓から入る日射を防ぐことが必要です。具体的には、遮熱ガラス、ブラインド、レースカーテン、オーニングなどを設置することです。
断熱材を7種類解説します
「夏涼しくて、冬暖かい家」を実現するには、適切な断熱と気密が必要です。一般的には「高気密・高断熱住宅」と呼ばれます。
その高い断熱性を生み出すのに一番インパクトが大きいものが「断熱材」です。
基本的に住宅は、断熱材を使って住宅を施工することで断熱を実現します。ここでは、その大事な断熱材について詳しくみていきたいと思います。
グラスウール
グラスウールとは、ガラス(グラス)をウールのように細い繊維状に加工した断熱材です。
在来木造軸組工法で一戸建てを新築した場合、一般的に用いられる断熱材がこのグラスウールです。
床、壁、天井などと住宅のほとんどの部位の断熱に使用できます。無機質なので不燃材です。吸音性能や耐久性にも優れています。
ロックウール
ロックウールとは、玄武岩などの耐熱性に優れた鉱物を高温で溶かして、微細な繊維状にした断熱材です。
床、壁、天井などの住宅のほとんどの部位の断熱に使用できます。石綿と字が似ていますが、0.3ミクロン程度の極細繊維である石綿とは基本的に異なります。
セルロースファイバー(セルローズファイバー)
セルローズファイバーとは、天然の木質繊維を利用したばら状断熱材です。木質繊維系断熱材です。
新聞の古紙が用いられることがあります。断熱性、防音性があります。
ビーズ法ポリスチレンフォーム
ビーズ法ポリスチレンフォームとは発砲プラスチック系断熱材の一種です。「Expanded Poly-Styrene」の頭文字をとって「EPS」とも呼ばれます。
いわゆる発砲スチロールです。一つ一つの粒の中に独立した気泡構造を持ったボード状の断熱材です。水や湿気に強いです。軽く、加工性、施工性に優れています。
押出法ポリスチレンフォーム
押出法ポリスチレンフォームとは、ポリスチレン樹脂に炭化水素などの発泡剤を加えて押出成形された断熱材です。
断熱材を建物の外側に張りつける外断熱工法に適したボード状の断熱材です。水に強く、断熱性に優れています。
薄くても断熱効果が高く、施工後の重量も軽くすることができます。水に強く、耐湿性があるため、基礎や土間床の断熱にも使用できます。
ポリスチレンフォーム2種の違い
上記2つのポリスチレンフォームはイメージとしては、発泡スチロールです。冷凍品、冷蔵品などを入れる発泡スチロールの箱はなぜ、保冷用に使われるのでしょうか?
それは断熱性が高い素材だからです。なので住宅の建材としても、使われているわけです。
発泡スチロールとは合成樹脂素材の一種で、気泡を含ませたポリスチレンのことです。スチロールはスチレンの別名です。
上記2つの「ビーズ法ポリスチレンフォーム」と「押出法ポリスチレンフォーム」の違いは製法の違いです。化学的にはほぼ同じですが、形状や気泡の特性が違います。
それぞれの製法についてまとめてみます。
ビーズ法ポリスチレンフォームの製法
ビーズ法ポリスチレンフォームの製法は「ビーズ」と呼ばれる小さなポリスチレンの粒を発泡させるというものです。
直径1mm程度のポリスチレンビーズにブタン・ペンタンなどの炭化水素ガスを吸収させ、100度以上の高温蒸気を当てます。
樹脂を軟化させると共に圧力を加えて発泡させます。発泡したビーズ同士は融着し合い、冷却した後、ポリスチレンフォームとなります。容積の95%は炭化水素ガスです。
押出法ポリスチレンフォームの製法
押出法ポリスチレンフォームの製法は液化した原料を吹き出すことで製造するものです。
液化した原料と発泡剤、難燃剤を高温・高圧下でよく混ぜ、一気に通常気圧・温度の環境に吹き出します。連続的に発泡、硬化させ、必要な大きさの板に切断します。
硬質ウレタンフォーム
硬質ウレタンフォームとは、ポリウレタン樹脂が主成分の発泡させたスポンジ状の断熱材です。
微細な独立気泡で形成されています。その気泡で断熱します。
フェノールフォーム
フェノールフォームとは非常に安定した分子構造をもつフェノール樹脂を主原料にした断熱材です。
素材の安定性が高く、長期間にわたって優れた断熱性能を発揮します。
フェノール樹脂は熱硬化性樹脂で130度までの使用に耐える耐熱性があり、防火性にも優れています。
素材による分類:断熱材のカテゴリ
断熱材は大きく2つに大別できます。
- 「細かい繊維の間に空気を閉じこめる繊維系断熱材」
- 「独立した気泡の中に空気を閉じこめる発泡プラスチック系断熱材」
各種の断熱材をそれぞれのカテゴリに分類してみますと、下記の通りになります。
- ロックウール
- グラスウール
- セルロースファイバー
- ビーズ法ポリスチレンフォーム
- 押出法ポリスチレンフォーム
- 硬質ウレタンフォーム
- ポリエチレンフォーム
- フェノールフォーム
水に弱い断熱材、強い断熱材:断熱材のカテゴリ
断熱材は素材によって、水に弱いか強いか、という違いがあります。
透湿性(水蒸気の通しやすさ)が高いか、低いか。透湿抵抗が小さいか、大きいか。そういう違いです。
透湿性が高いと、水蒸気を通しやすいです。透湿抵抗が小さいと、同じく水蒸気を通しやすいです。水に弱いということです。
主な透湿抵抗の小さい断熱材は次のようなものです。
- 主要な繊維系断熱材
- ロックウール
- グラスウール
- セルロースファイバー
プラスチック系断熱材は基本的には透湿抵抗が大きいです。
透湿抵抗の低いプラスチック系断熱材は、吹付け硬質ウレタンフォームのうち、A種3に該当するもの。フェノールフォームのうち、A種フェノールフォーム3種2号に該当するものです。
形状による分類:断熱材のカテゴリ
断熱材は種類によって形状が異なります。
よく使われるグラスウールは繊維系断熱材ですが、繊維系断熱材は綿のようなフェルト状のものが一般的です。プラスチック系断熱材では、工場で成型されて出荷されるボード状のものが多いです。
- フェルト状・・・無機繊維系
- ボード状・・・発泡プラスチック系
- ばら状・・・無機繊維系、木質繊維系
- 現場発泡・・・発泡プラスチック系
断熱の仕方
断熱の仕方(断熱工法)には、2つあります。
充填断熱工法と外張断熱工法です。それぞれ、内断熱と外断熱とも呼ばれることがあります。
充填断熱工法と外張断熱工法のそれぞれを図示すると、下のようになります。
それぞれの断熱工法の特徴をみていきます。
充填断熱工法(内断熱)の特徴
定義
充填断熱工法(内断熱)とは、壁内の柱・間柱、梁など軸組み間の空隙に断熱材を施工する方法。
壁厚
充填断熱工法は壁内で断熱するため、断熱材を施工しても、壁が厚くはならないです。
使用される断熱材
主に繊維系断熱材が用いられます。
ただし、発泡プラスチック系断熱材を用いることもできます。
気密化について
断熱材で気密をとることは難しいです。
そのため、気密化するには、断熱材の他に気密フィルムなどで施工しなければなりません。
内部結露対策
繊維系断熱材は水蒸気(湿気)を通しやすいです。
そのため、断熱材の室内側に水蒸気が侵入しないように防水層として防湿フィルムの施工が必要です。
同時に断熱材の外側には水蒸気を外気に排出しやすくするための通気層、透湿防水シートの施工が必要です。
施工について
充填断熱工法は隙間に断熱材を充填(はめこむ)工法です。
そのため、柱との間に隙間が生じる可能性があります。
この隙間ができないよう留意する必要があります。
また、施工後、断熱材が自重で垂れ下がったり、落下しないように固定する必要があります。
注意点
断熱材の保管時や施工時に水濡れに注意が必要です。
断熱材について解説した部分でも述べたように、グラスウールを代表とした
繊維系断熱材は湿気を含むと断熱性能が低下します。
断熱壁において、電気配線、コンセント、スイッチ類を施工する際は、
断熱欠損、防湿層、気密層に穴を開けないようにする必要があります。
よくあるのが、後付けでエアコンなどを設置するケースです。
後付けなので、新たに配管などのため、穴を開けて設置する場合があります。
状況をきちんと把握していない場合、開けてはならない箇所に穴を開けてしまうことがあります。
そうすると、断熱効果が低下したり、気密レベルが下がってしまうことになります。
外張断熱工法(外断熱)の特徴
定義
外張断熱工法(外断熱)とは、柱・間柱、梁など軸組みの外側に断熱材を施工する方法。
壁厚
軸組みの外側に断熱材を施工するため、壁厚が増します。
狭小敷地では注意が必要です。
使用される断熱材
外張断熱工法(外断熱)には、主にボード状の発泡プラスチック系断熱材が使用されます。
ボード状の繊維系断熱材が用いられる場合もあります。
気密化について
気密化しやすいです。
発泡プラスチック系断熱材自体が空気を通しにくいため、
気密材として用いることができます。
ただ、ボードとボードの間、その他の建材との間には、目地処理が必要です。
内部結露対策
外張断熱工法(外断熱)でよく用いられる発泡プラスチック系断熱材は水蒸気を通しにくいです。
そのため、防湿フィルムの施工は不要です。
ただ、外気側は断熱材と外装材の間に水蒸気が滞留しないように通気層が必要です。
施工について
断熱材は柱などに釘、ビスなどで留めつけます。
外装材取付については、断熱材の外側に通気層をもうけるとともに外装材の下地となる胴縁を釘などで留めつけます。
そのため、外装材の重量を考慮して、釘などの選定、留めつけ間隔などに留意する必要があります。
軸組の外側に断熱材を施工するので、壁内が空洞のままです。
そのため、配線などに対する注意をしなくてもよいです。
注意点
外側に壁厚が増すため、サッシ固定枠を壁外側に別途設けなければなりません。
開口部(窓)の断熱と日射遮蔽
断熱をきちんと行い、「夏涼しくて、冬暖かい家」を実現するには躯体の断熱だけでは不十分です。
住宅の断熱化における、もうひとつの大きなポイントがあります。
それは「開口部(窓)の断熱」です。
開口部(窓)の断熱
開口部(窓)は躯体よりも7から12倍も熱を通しやすいです。
そのため、考慮に入れておかないと、たとえ他の部分を断熱していたとしても、せっかくの断熱性能が低下してしまいます。
開口部(窓)の断熱性能は「建具枠」と「ガラス」のそれぞれの断熱性能の組み合わせで考えます。
建具枠(サッシ)の断熱性能
建具枠(サッシ)はその素材と構造によって断熱性能が違います。
断熱性能高い:樹脂サッシ、木製サッシ(工場生産品)
|
断熱性能高め:アルミ樹脂複合サッシ※1
|
断熱性能低め:アルミ熱遮断構造サッシ※2
|
断熱性能低い:アルミサッシ
※1:アルミ樹脂複合サッシとは、室外側を耐久性の高いアルミ等の金属製、室内側は熱伝導率の低い樹脂製や木製とする複合構造のサッシのこと。
※2:アルミ熱遮断構造サッシとは、熱伝導率の高い金属素材を、樹脂素材などを使って室外側と室内側とに熱的に分離した構造のサッシのこと。
建具枠(サッシ)に使用される素材の熱伝導率
下記の数字が窓の建具枠(サッシ)に使用される素材の熱伝導率になります。
- アルミ:200
- 木材:0.12-0.19
- 樹脂(塩化ビニル):0.17
熱伝導率が低いほど、断熱性能が高いです。
基本的に金属は熱伝導率が高いです。熱を通しやすいです。そのため、断熱性能は低いです。
そこで、金属製熱遮断構造をとったり、樹脂との組み合わせで断熱性能を高めることが必要となります。
ガラスの断熱
窓に使用されるガラスは種類によっては、断熱性能が低いものがあったり、断熱性能が高いものがあったりします。
ガラスの種類と断熱性能についてみていきます。
ガラスの種類を大別すると、2つに分けられます。
「ガラスを1枚だけ使用する単板ガラス」と「2枚のガラスの間に空気層を設けた複層ガラス」です。
単板ガラス:熱貫流率6W/m2K
最も一般的な透明な平板ガラス。
日射をほとんど透過します。
普通複層ガラス:熱貫流率3W/m2K前後
2枚の板ガラスの間に乾燥空気を封入することで断熱性能を高めています。
日射のほとんどが透過します。
低放射複層ガラス:熱貫流率2W/m2K前後
特殊金属薄膜をガラス表面にコーティングしたガラス(室内側に用いています)。
断熱性能に優れています。一般的にLow-Eガラスと呼ばれています。
遮熱低放射複層ガラス:熱貫流率2W/m2K前後
低放射複層ガラスを複層ガラスの室外側に用いたものです。
日射遮蔽性能が高いです。
真空ガラス:熱貫流率1W/m2K超
2枚のガラスの間を真空層とすることで、厚さが薄くても断熱性能が高いです。
複層真空ガラス:熱貫流率1W/m2K以下
真空ガラスと単板ガラスで複層ガラスにしたもの。
開口部の断熱性能の比較
開口部の断熱性能は、建具枠(サッシ)とガラスの組み合わせで決まります。
ここでは、どの組み合わせがどれくらいの断熱性能を発揮するのか、開口部の断熱性能を比較していきます。
アルミサッシ
- 単板ガラス:熱貫流率6.51W/m2K
- 複層ガラス(A6):熱貫流率4.65W/m2K
アルミ熱遮断構造サッシ/アルミ・樹脂複合構造サッシ
- 複層ガラス(A6):熱貫流率4.07W/m2K
- 複層ガラス(A12):熱貫流率3.49W/m2K
樹脂サッシ
- 複層ガラス(A12):熱貫流率2.91W/m2K
- Low-Eガラス(A12):熱貫流率2.33W/m2K
※注:文中のAは空気、その後の数字はガラス間の中空層の厚さを示しています。
窓の日射遮蔽性能
ガラスの表面に特殊金属膜をコーティングしているものがあります。
これは、特殊金属膜で放射熱を遮蔽、反射、吸収する機能を持たせるためにしています。これらによって、窓の日射遮蔽性能が高まります。
なぜ、日射を遮蔽する必要があるのでしょうか。
それは、日射が室内に侵入することで、日射熱によって室温が上昇するからです。夏場には、日射熱で室温が上昇してしまうのです。
日射遮蔽には、低放射複層ガラスといったガラスの種類を選ぶこと。
そして、日射遮蔽部材の活用が効果的です。日射遮蔽部材には、カーテン、すだれ、ブラインドなどがあります。
夏涼しく、冬暖かい住宅をつくるには
断熱性能を高めるということは、室内側と室外側とで熱の移動がなくなるということです。
そのため、冬場は暖房をそこまで使わなくても暖かい住宅になります。
反面、夏場は室内に熱がこもりやすくなります。
理屈から言っても、夏場と冬場は環境が反対で、求められるものも反対です。
相反する効果を求められるわけです。
それを解決するには「変化させる」ことが必要です。
断熱性能が高いですので、冬場はそのまま、少し暖房を使うことで暖かい住宅です。
問題は熱のこもりやすくなる夏場です。夏場に必要は変化とは、どのような変化かというと、日射取得の変化です。
窓ガラスを季節によって変化させることは難しいです。しかし、日射遮蔽物を変化させることはできます。
たとえば、ブラインド、紙障子の設置、庇(ひさし)や軒の出による日除けなどで夏の日射を遮るのです。
単純に考えて、窓の日射遮蔽を強化しすぎると、冬の暖かさに必要な日射を取り入れられません。
そこで、適度に日射を入れながらも、夏場の日差しを遮る日射遮蔽物を変えていくことで、夏も冬も快適にすごせます。アレンジです。
高気密高断熱住宅の住まい方・住む上での注意点
高気密高断熱住宅は、その名の通り、高い気密性と高い断熱性を持った住宅のことです。
そのため、従来あった住宅と同じような住まい方をしてしまうと、よくないことが多々あります。
ここでは「高気密高断熱住宅の住まい方・住む上での注意点」についてお伝えします。
1.開放型ストーブは使用しない
開放型の石油ストーブ、ガスストーブ、開放型の石油・ガスファンヒーターは燃焼ガスを室内に放散します。
高気密高断熱住宅は名前の通り、気密が高いので一酸化炭素中毒になるリスクが起こります。もちろん、換気を多くすれば問題ないのですが、省エネ効果は低下します。
ですから、暖房には燃焼排ガスを屋外に排出する、室内の空気を汚さない器具を選ばれることをおすすめします。
たとえば、密閉型暖房機、FF式温風暖房機、電気ストーブ、エアコン、セントラルヒーティングなどです。
2.換気装置は止めない
換気装置(計画換気システム)は常時運転させます。台風のときは例外的に止めたほうがいいです。それ以外は常時運転させます。
換気システムが止まると、空気質の悪化、結露が起こる可能性があります。停電や故障など万一、換気装置が作動しない場合は、窓を開けて自然換気を行います。
3.ガスコンロ使用時には強制換気する
ガスコンロなどを使用する時は必ず換気扇(レンジフード)を使って強制換気します。
上述と同じ理由で、高気密高断熱住宅は気密が高いです。そのため、酸欠や一酸化炭素中毒のリスクが起こります。
4.人が大勢集まった時には換気量を増やす
室内に大勢の人が集まった時などは、換気量が不足しがちです。
強制換気を行うか、窓を開けて自然換気を行います。
5.換気装置をこまめに掃除する
換気装置の給気口と本体のフィルターは、定期的に掃除します。
給気口のフィルターにはゴミやほこりが溜まります。定期的に掃除をしないと、必要な換気能力が発揮できなくなります。
6.外部に面した壁に穴あけるとき、増改築のときは相談する
高気密高断熱住宅の壁内部は断熱・気密をきちんととるために配慮されて施工されています。
深い理解のないまま、エアコン取付工事などで壁に穴をあけてしまうと、せっかくの性能を損なってしまいます。ぶちこわしです。
外部に面した壁に穴をあけるときや、増改築の際には建設した業者に相談することをおすすめします。
7.床下収納に注意
高気密高断熱住宅は、冬も家のなか全体が暖かいです。室内の床下収納のなかも暖かいです。
もし、生鮮食料品などを置くと、痛んだり腐りやすくなったりします。注意が必要です。
断熱関連用語集
断熱に関する用語の意味をまとめています。
熱伝導率(λ:ラムダ、単位:W/(m・K))
ひとつの材料において、厚さが1mで、両側の温度差を1度としたときに1時間当たりに、材料面積1平方メートルの部分を通過する熱量。
数値が小さいほど熱を伝えにくく断熱性能が高い材料。
熱貫流率(U:ユー、単位:W/(m2・K))
壁などの部位において、両側の温度差を1度としたときに1時間当たり、部位面積1平方メートルの部分を通過する熱量であらわされ、両側表面空気の熱抵抗も算入されています。
数値が小さいほど熱を伝えにくいことをあらわします。
熱損失係数(Q:キュー、単位:W/(m2・K))
住宅から屋外に逃げる熱量をあらわす数値で、壁などの部位を通って逃げる貫流熱損失と、建物隙間から逃げる換気熱損失を合計したもの。
住宅内外の温度差が1度としたときに1時間当たりの熱損失量であり、省エネ基準では床面積当たりの値で示しています。
日射侵入率(η:イータ、単位:なし)※日射熱取得率ともいう。
ガラスに入射する熱量を1としたときの、室内への侵入する熱量の割合のこと。
日射取得を重視する場合は、日射侵入率の大きなガラスが有利であり、日射遮蔽を重視する場合は逆に日射侵入率の小さなガラスが有利。
なお、JISでは日射熱取得率として規定されています。カタログ値や技術資料では日射熱取得率として示されます。
気密層
気密材、テープなどの補助材を用いて連続的に隙間が生じないように施工することにより気密性能を発揮するために構成される層のこと。
防湿層
防湿材、テープなどの補助材を用いて連続的に隙間が生じないように施工することにより構成される透湿抵抗の大きい層のことで、断熱材の室内側に設けられる。
通気層
躯体内の水蒸気を排出するための通気を確保する層のことで、断熱材の外気側に設けられる。
防風層
防湿材、テープなどの補助材を用いて連続的に隙間が生じないように施工され、断熱材と通気層の間に設けられる層のこと。気密性能と防水性、および水蒸気透過性を有する。