ここからは、実際のマーケティング戦略について考えていきます。
マーケティング戦略
専門家のマーケティング戦略には、特徴があります。
『専門家のマーケティング戦略における特徴』
専門家の顧客は、一度に一人(社)ずつしか獲得することができない
たとえば、飲食店の場合、一度に2-4人のお客様が入店します。それが短時間に複数回起こることも多々あります。顧客数と購買回数が多いわけです。一方で、専門家の場合、一度に1人(社)しか獲得できません。それも、成約までに対面で会話をして、信頼を得なければなりません。時間もかかります。これは、専門家の提供する商品が、専門的なサービスであり、信頼の置ける専門性や信頼を得る必要があるからです。
そのため、専門家のマーケティング戦略においては、ある目標が必要です。
それは、次のようなものです。
最小の労力と時間、コストで、潜在的な顧客と、対面で(顧客の問題についての)個人的な会話をすること
これを実現することで、専門性を示すことができ、信頼を得ることができます。しかも、少ない労力と時間、コストで、です。ここでは、専門家のマーケティング戦略の代表的なアプローチを列挙します。
専門家のマーケティング戦略・5つのカテゴリ
・プッシュ型アプローチ
・プル型アプローチ
・ツール
・イベント
・ネットワーク(人脈)
1. プッシュ型アプローチ
プッシュ型アプローチは「攻め」のアプローチです。こちらから、潜在的な顧客に向けてアプローチします。たとえば、テレマーケティング(新規、定期的な電話、両方)、ダイレクトメール、ファックスDM、チラシ、訪問(アポあり、飛び込み両方)などがあります。
2.プル型アプローチ
プル型アプローチは「引き込む」アプローチです。潜在的な顧客のほうから、声掛けいただくようにするアプローチです。たとえば、インターネット広告、新聞広告、雑誌広告、テレビCM、ラジオCM、業界誌広告、ミニコミ誌広告、パブリシティ/PR、新聞・雑誌への記事提供、独自調査の発表、文化・スポーツイベントのスポンサーなどがあります。
3.ツール
ツールはこれら全体的なマーケティング戦略を補完、補強するアプローチです。たとえば、ウェブサイト、名刺、小冊子、ニュースレター、会社案内などがあります。
4.イベント
イベントは潜在的な顧客に対して、一度に複数人にアプローチできる方法です。たとえば、講演、セミナー、イベント、勉強会、交流会、事務所に招待などがあります。
5.ネットワーク(人脈)
ネットワークは自分のネットワーク(人脈)を活用することで、潜在的な顧客にアプローチするものです。たとえば、人縁、紹介、会合出席、提携、地域活動、市民活動、コミュニティ活動(趣味のコミュニティなど)などがあります。
どのようなマーケティング戦略が適しているかは、概ねWhatとWhoによって変化します。
参考例:
「1997年に、アメリカで行なわれた「成功した建築事務所の戦略」についての結果」
・1,500以上の潜在顧客の情報をデータベース化し、定期的に顧客の状況を追跡する。(⇒Who)
・他の建築事務所やエンジニアリング会社と戦略的提携関係を結ぶ。(⇒How)
・医療関係の建物や研究所といった特化分野の建築に詳しい専門家を雇用して、顧客の視点を採り入れる。(⇒What)
・特化分野について革新的な建築をテーマにシンポジウムを開いたり、経営トップが本を執筆したりして、組織が業界の第一人者であることをアピールする。(⇒How)
参考文献:Linn, Charles and Pearson, Clifford. “Lessons from America’s Best-Managed Firms,” Architectural Record (January 1997), p106.