これまで書いてきたブログ「1000冊読書感想文を書くとどうなるか?」はほとんどがビジネス書でした。もちろん、今でも主流としてはビジネス書・経済書なのですが、私自身、でんホームという住宅会社の一員です。ですので、今後は読書感想文のなかに、住宅関連の書籍も入ってくることになると思います。
ということで、住宅関連書籍としてひとつ。
中村好文氏の著書「普通の住宅、普通の別荘」です。
中村好文氏は建築家で、日本大学生産工学部居住空間デザインコース教授です。
武蔵野美術大学建築学科卒業後、都立品川職業訓練校木工科にて家具製作を学びます。
1976年から1980年まで吉村順三設計事務所に勤務し、家具製作のアシスタントを努めます。
1981年に自身の設計事務所「レミングハウス」を設立。現在に至ります。
吉村順三設計事務所に勤務されたキャリアからも明らかなように、吉村順三に影響を受けたデザイン、テイストです。自然素材を使った、落ち着く空間設計をされています。でんホームのテイストとも近いです。
さて、本書は元々、「中村好文・住宅作品集」のテーマで製作される流れだったそうですが、「作品集」が自分の柄ではないと考え、このような本になったそう。
中村好文氏はもちろん建築家なのですが、文章もお上手。
住宅建築のエッセイを多数、書かれており、内容も素晴らしく、エッセイストとしても有名です。
中村好文氏自身の家、つまり、自邸も本書に掲載されています。
「久が原のすまい(くがはら)」という名称です。
その自邸をご覧いただけばわかるのですが、たとえば、縦長の本棚に約450冊の文庫本があります。
加えて、2階壁面に大きな本棚をつくっています。
読書家だからこそ、エッセイもお上手なのですね。
中村好文氏の建築の思想について
中村氏の建築思想についてですが、本書ではこのように書かれています。
私の中には「可能な限り石油化学製品を使いたくない」という気持ちがある。とはいえ「自然素材以外は使わない」というほど頑固者ではない。わかいやすく言えば「古びたときに美しくなる素材を使いたい」のである。
建具にはめ込んだ御簾の素材、暖炉の床に使ったライムストーン、遮熱用の銅板、襖に張った糸を漉き込んだ包装紙、家具のシナ合板とチーク材、洗面カウンターの花崗岩、真鍮製の閂錠(かんぬきじょう)・・・どれも私のお気に入りの素材ばかりである。
このような一連の建築思想については、私どもでんホームも共感するところです。
「古びたときに美しくなる素材」は時が経つにつれて、いい意味で味になるものです。
そうでない素材は経年劣化します。
時が経つにつれて、汚くなっていくのです。
長く愛することのできる住宅は、経年劣化する家であってはならないと思います。
それは、結局は劣化した住宅を取り壊すか、大規模リフォームして原型を止めないかたちになるからです。
落ち着いた、いい年の取り方のできる家。
それは中村氏も、でんホームも同じ気持ちです。