前々回の記事で、家族だんらんの時間を増やすことが現代日本人の家族にとっては大切だとお話しました。
論旨としては、現代の日本人家族はそれぞれ忙しい生活を送っており、仕事、家事、友人関係、塾、習い事で手一杯。だからこそ、家族が一緒にいられる時間を長く、充実したものにすることが大切で、現代の住宅に求められる重要な機能だというものです。
さて、そのためには、どのような家づくりをすればよいのでしょうか?
基本的な考え方としては「個室をつくらない」ということです。
本質的にはワンルームのスタイル。もちろん、家具や間仕切りなどで、うまく仕切ることは大事です。寝室、リビング(居間)、台所、トイレなど仕切るべき部分があります。ただ、むやみやたらに個室をつくるということはすべきではないのです。家族間での一定のプライバシーが保たれる状態であれば、本質的にはワンルームで設計すべきです。
完全な個室をつくってしまうと、どうしてもそこにこもりがちになります。個室で完結するからです。家族と「わざわざ」だんらんしに来ることになります。なかなか難しいです。
完全な個室は、人がいる雰囲気、存在感を消してしまいます。それぞれが、それぞれ個別の生活をすることになります。家族の意味がなくなります。家族だんらんの時間が減ります。
個室主義なワケ
では、このような個室が重要視されているのはなぜでしょうか。
それはそちらのほうが価値があるように見えるからです。「2LDKの家」と「5LDKの家」であれば、どちらがすごそうでしょうか。高そうに見えるでしょうか。たとえ、本質的に「2LDの家」のほうが素晴らしくても、「5LDKの家」のほうが高そうに見えてしまうものです。
ただ、根本的には「2LDKの家」と「5LDKの家」は同じです。もし、設計思想でワンルームスタイルを考慮に入れていれば、「2LDKの家」に間仕切りをいくつか入れれば「5LDKの家」にできます。
一方で、「5LDKの家」は設計思想にワンルームスタイルがないので、大きな壁付けです。これは一見、いいように見えますが、実は大きな問題点をはらんでいます。
それは「可変性のなさ」です。
「2LDKの家」を間仕切りを入れれば「5LDKの家」にできますし、間仕切りをなくせば「2LDKの家」にもできます。可変性が高いです。可変性が高いことは家を「住み継げる家」にすることができます。
「5LDKの家」は壁がきっちり入れられていますので、取り壊すにはお金がかなりかかります。ただ、なかなか問題は大きいです。可変性が低いです。それは間取りを変化させられないことで、子供がいなくなれば、子供部屋は物置部屋です。壁をなくして、広くすることはできないです。わざわざ狭いままです。広くできるのにです。
このように、現代のライフスタイルの変化と家族の幸せ、そして、家そのものの長期耐用性を高めるためにも、設計思想としてのワンルームスタイルは大切です。
最近では、ワンルームスタイルの流れがでてきていますので、かなり一般的な間取りになってくるかと思います。これから家を建てられる際には、検討されてみてはいかがでしょうか。