桂離宮:緻密に計算し尽くされた美(前編)に続きまして、後編です。
桂離宮の茶室たち
賞花亭(しょうかてい)。
中島の一つで斜面を飛び石づたいに登ったところにある茶屋が賞花亭です。
茅葺切妻屋根に皮付きの柱。屋根に柱、少しの壁といったガランとした質素なつくり(とはいっても、現代では同じものをつくろうと思うと、大変高価です。茅葺きも技術的にも、費用的にも高いですし)。
この賞花亭の特徴のひとつが、南側、竹の連子窓を通してみる景色。
前面は池であり、海。でありながらも、ふと振り返ると、目に入るは森。贅沢です。
笑意軒(しょういけん)。
茅葺寄棟造りの屋根に杮葺きの庇。田舎風の茶室。
上のほうに、小舞壁から丸く小舞部分が連続して表れてチャーミングな印象。
笑意軒のウリのひとつが、ピクチャーウィンドウ。
景色がそこだけ切り取られたかのように見える窓。
天井との陰影がさらに美しさを増します。額にあたる部分の下側には、舶来品のビロードと金箔。ぽっかりとそこだけ切り取られたかのような景色。この美しさをつくりあげるには、どうすればいいのでしょうか。
桂離宮の書院群
桂離宮のメインである書院群。
東から、古書院、中書院、楽器の間、新御殿。雁行形に連なって並びます。新御殿は増築された建物。
一般拝観では、内部は見ることができません。伺ったときは、メンテナンスのタイミングだったようで、障子が外されています。屋根の黒に、障子と漆喰壁の白。そこに柱の茶色がラインで入って現代でも美しいと感じる素晴らしさ。
桂離宮の主要な景観を一望できるのが月見台(つきみだい)。
月を鑑賞するために存在します。月見は月の上った姿を見るだけではないそう。月がのぼり始める姿から、見始めて愛でるそう。長い時間かけて、味わうものだそうです。贅沢ですね。
少し進んで月波楼(げっぱろう)。
かなり開けっぴろげな、開放的な建物。
月波楼からの眺めは、船に乗っているが如く、右に目をやれば、海が見えます。
さらに、左に目をやれば、山が見える。そういう贅沢なつくりです。
最後は書院の玄関。
拝観は、御幸門から左手に曲がっての移動でした。
高貴な方々は、そのルートではなく、御幸門から直進してこの書院玄関に行くそうです。
その際の試み。書院玄関までの間に、庭が一瞬見えるようになっています。
しかし、左右は生け垣。正面には松の木。あえて、全景を見せずにじらす。見えるようで、見えないチラリズム。そういう試みが多用されています。
さて、桂離宮を拝観して感じることは、「外構」と「建物」の一体化です。
住まいづくりにおいては、やはり予算的な問題があります。
そのため、往々にして「外構」をケチってしまいがちです。
外構は全面コンクリートで打ってしまう。植栽は特にせず。そういう住宅になりがちです。
しかし、住まいそのものの価値を高める点でも、美的感覚の点でも、やはり外構をきっちりとつくりこむことが、結果コストパフォーマンスの高い住まいをつくりあげるものと、でんホームは考えています。
桂離宮の徹底的に考え尽くされた緻密な外構はさすがに難しいかもしれません。
しかし、ワンポイント坪庭をつくって、緑を感じられる瞬間をつくること。
外観で自然と調和がとれ、建物と一体となって絵になる外構計画。
それが住まいづくりにとって大事なのだと改めて気づかされた拝観でした。