建築設備・資材

山長商店(和歌山)のこだわり構造材は噂に違わずスゴかった

和歌山は田辺市に本社を構える「山長商店」。
山長商店さんでは主に自社の山林から伐出した杉・桧の木材を加工した構造材の提供をしています。

住宅の骨組みが構造体で、その木材供給会社さんになります。

今回、山長商店さんには山長商店さんの木材を構造体として使われるお客様2組様と共に私ども、でんホーム2名が訪問させて頂きました。

※でんホームでは標準仕様ではないのですが、オプション費用を頂きましてお選びいただけるようにしております。

「山長商店の木材=紀州材」


和歌山の木材は「紀州材」と呼ばれており、江戸時代から有名です。

地域的には関西圏に位置する和歌山ですが、1861年に熊野市木本から積み出された木材は、3年間でスギ板20万束分にもなりました。このうち、87パーセントが江戸へ送られ、残りが日方(海南市)にて漆器製造の材料として利用されました。なお、江戸へ送る際には、廻船が用いられていたようです。
引用元:紀州材の歴史-和歌山県

山長商店の強み。何がどうすごいか?


山長商店を実際に視察してみて「山長商店の強みとは何か」というと、以下の3ポイントにまとめられます。

  1. 性能・品質・産地・生産者の「見える化」
  2. 山から構造材まで一貫生産
  3. 高度な乾燥技術

私個人的には後述しますが、山長商店という企業そのものの変化の歴史が興味深かったのですが、住宅建築においてはその構造材・木材の製品としての品質というコアな部分が非常に高いレベルであるところがやはり、山長商店の強みと言えると思います。

また、コスト的なところを見た時に、2020年前後のウッドショック以前であれば、価格も高く、なかなか手が出ない印象を持っていました。ところが、ウッドショック後の木材価格が高止まりしている現状では、山長商店の構造材は高価であるのですが(高価である代わりに構造材としては最高級品)、オプションとしての検討が可能なレベルの価格差に落ち着いています

つまり、少しお金を積めば、山長商店の構造材を使って自宅を建築することができるイメージのコストイメージになったわけです。これは素晴らしい。そういう感じの良さ、ですね。

性能・品質・産地・生産者の「見える化」


山長商店では全ての杉(スギ)桧(ヒノキ)の構造材にJAS規格に則った全量検査・品質表示を実施しています。

原産地表示・合法性証明マークと共に、JAS認定マーク、樹種、含水率、強度、寸法、製造者、シリアルナンバーを表示

「この木材は自らの生命と財産を守る構造材として信頼できるか」ということを判断する情報が表示されています。

1. モルダー仕上げ・目視検品


0.1ミリ単位の精度で成形され、その後、職人(宇都宮さん?)が1本1本検品し割れなどの不具合をチェックします。

実際、私たちが伺った際にも検品作業を見学できまして、約50%の製品が合格で、反対に言えば50%くらいは検品後、NGとなるレベルでクオリティコントロールされています

ちなみに検品でNGとなっても、B級品のようなグレードで別の流通で販売されたり、別の製品になったりと、捨てるわけではないので悪しからず。

最高級の大トロは大トロとして販売されて、それ以外の赤身の部分は価格は落ちるけれども、別のところで売られることになるわけです。

2. マイクロ波含水率測定器


木材を透過したマイクロ波の減衰率を計算して、木材中の水分量を測定します。

木材の含水率が高いと水分を多く含む木材になるわけで、問題なのは強度が落ちるところです。反対に含水率が少なすぎても、強度が落ちてしまうので、低めの水準20%以下程度で保つのが良いそうです。

3. 打撃式縦振動法動的ヤング係数測定器


木材の端面を打撃することにより、縦振動周波数から強度を測定します。

実際はちょっと機械が動くレベルですが、それによって木材1本1本の強度をきちんと測定できます。

4. インクジェット印字

目視による検品、含水率測定、強度測定を経て合格した木材のみ材面にJASマークを印字し、JAS認定品として製品化されて出荷されます。

山から構造材まで一貫生産


山長商店は紀伊半島に約6,000ヘクタールの自社林を所有しています。そこでの植林、育林、伐採、製材、乾燥、仕上げ、品質検査、選別、プレカット加工までの全てをグループ一貫体制しており、樹齢50-100年の紀州産杉・桧を製品化されています。

山から構造材まで一貫生産するのは、優良な木材を安定供給できるということと同時に豊かな森の育成に繋がります。

高度な乾燥技術


山長商店では「高温蒸気式減圧乾燥機」を導入しています。この乾燥機は機内の圧力を最大0.2気圧まで減圧することで、水の沸点を下げることができ、低温での乾燥を実現させています。

一般的な木材の乾燥機は高温であり、急速に高温で木材を乾燥させると、材質劣化や内部割れを引き起こす可能性があるので、山長商店では乾燥温度を低くできるこの「高温蒸気式減圧乾燥機」を導入されたそうです。

気圧を下げることで気化が活発に行われ、高い乾燥能力を発揮するため、平角材のような径の大きな木材の乾燥も可能になり、日本で初となる杉平角材のJAS機械等級区分JAS製品の製造を実現されたそうです。

山長商店とはどういう会社か?会社概要なども


今回の訪問で榎本長治社長の自叙伝「木と共に生きて」を頂戴しまして、拝読いたしました。すると、山長商店は長い歴史のなかで、さまざまな変遷・変化をして生き残ってきた会社であることがわかります。長く企業を繁栄させ続けるには変化が必須なのだと痛感します。

山長商店は1720年頃に初代山田屋六左衛門が備長炭の販売を開始したのが始まりの会社さんです。ざっくり300年の歴史がある会社さんです。

現在の社長・榎本長治さんは十代目。

七代目・榎本長七

七代目長七は1877年から大きく事業を伸ばしたそうです。1878年以降、毎月10筆ずつくらい山を買い足していったそう。この時に山長商店の山林事業の原型ができ、本格的に林業へ進出することになったそうです。一方で、事業拡大に伴う多額の借金(当時8万円・現在の価値で16億円相当)を抱えたまま52歳で急死。

八代目・榎本傳治

八代目傳治は中学を中退して、母親とともに家業の危機を乗り越えます。質素倹約を旨として、朝4時に起きて5時には店の机に座り書類の整理や台帳の確認をしていたそうです。几帳面な性格が見て取れます。中興の祖ともいうべき存在みたいです。

九代目・榎本長平

九代目長平は山林業から製材業への進出を果たし、戦後の時代の波に乗って現在に続く山長商店を作り上げたそうです。具体的には戦前の山の用途としては炭山(燃料のエネルギー源としての木材)が主流だったところ、時代の変遷を見て取り、炭山に植る広葉樹林を杉や桧といった用材林地へ転換していきました。また、1958年には内地材の製材工場を建設しました。

1956年にソ連材が和歌山港に入荷したのを皮切りに1990年代まで米材・外材の製材が主力で利益を生んでいたそうです。

十代目・榎本長治

十代目・榎本長治さんの時代に入り、1993年ごろ、外材製材の不採算が続き、プレカット事業に進出しなければ明日はないという認識を持つように。当時、木造住宅のプレカット率は30%弱だったそうです。1997年にプレカット工場が竣工、稼働に漕ぎ着けました。

十一代目・榎本崇秀

十一代目崇秀さんは2016年に社長に就任されたのですが、2017年7月に38歳の若さで他界されたそうです。

現在は十代目・榎本長治さんが十一代目崇秀さんを中心に作り上げていた若い幹部社員の経営体制を引き継がれて動かれているそうです。

山長商店の会社概要

  • 社名:株式会社 山長商店
  • 所在地:〒646-0011 和歌山県田辺市新庄町377
  • TEL.FAX:TEL.0739-22-2605 FAX.0739-22-0919
  • 会社設立:昭和27年
  • 資本金:4,680万円
  • 代表者:代表取締役会長 榎本 長治
  • 事業内容:木材製材、プレカット加工販売
  • 主要製品:紀州産杉・檜の原木および製材品

山長商店のまとめ


「構造材は家を建てた後では取り替えられないので、しっかりしたものを使った方が良い」

これは山長商店のグループ会社・モックの芝社長が営業でPRした際の言葉だそうです。

山長商店のアピールポイントを端的に表現していると感じます。

住宅建築において、構造材は骨組みであって極めて重要な要素です。耐震性に大きく影響を与えますし、長期的に強い存在でいていただかなければなりません。そして、家を建てたあとでは取り替えることができません。だからこそ、しっかりとしたものを使った方がいいです。

では、「しっかりしたもの」とは何でしょうか?

なんとなく良さそうな木材では不十分だと感じます。

実際に1本1本を検査して、強度や含水率を測定し、また、低温乾燥された「性能の見える化」がなされた木材だと感じます。

長期的には多くの構造体メーカーで「性能の見える化」が進展するような気がします。ただ、現状で全方位にきちんとしていると感じる構造体生産会社は山長商店くらいかもしれません。

それだけ、山長商店の生産する構造材は安心感が持て、住宅建築業者が使いたくなるような品質であると感じます。

もちろんコスト的には高額になります。ただ、前述の通り、ウッドショック前だとなかなか採用に至らないような金額差がありました。そこからウッドショックを経て木材価格が高止まりしている現状では、劇的な価格差はなく、少しの金額追加オプションで採用できる水準になっています。

実際、私たちの今回の視察では、山長商店さんの木材を構造体として使われるお客様2組様と共に見学して行ったわけです。そして、今後の私どもの自社案件での採用を進めていたりします。

「構造材は家を建てた後では取り替えられないので、しっかりしたものを使った方が良い」

山長商店の強みを端的に表した言葉ですね。

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