今回は「住宅の価格が値上げされていく事情」について、また、「ロシアが経済制裁を受けたことの影響」、加えて「コロナショック」についても解説していきます。
- 2022年4月時点の住宅価格の動向を知りたい
- ロシアの経済制裁が住宅にどういう影響を与えているか知りたい
- ウッドショックの続報が知りたい
- 新型コロナウイルスが住宅にどう影響を与えているか知りたい
このような疑問にお答えする記事になっております。
短く言えば「値上げラッシュ」
ロシアの経済制裁や新型コロナウイルスからのウッドショック、これらの話を短くまとめると「値上げラッシュ」となります。
時系列からお話しますと、やはり最も大きなインパクトだったのは「新型コロナウイルス」に起因するウッドショック+建築資材の価格上昇でした。
ウッドショックとは、大きくはアメリカ、カナダなどの北米での住宅バブル(住宅供給不足)によって住宅着工がものすごく伸びたことで、その資材として主たるものの「木材」がそちらの需要にとられることで、日本国内に外国材が入ってこないことから「輸入木材不足+国産木材価格上昇」をもたらした、端的に言えば「木材不足」「木材価格上昇」です。
新型コロナウイルスの影響として、かなり大きいのはグローバルでの物流がストップしてしまうというところです。
たとえば、シャワートイレ(洗浄便座)の部品が中国生産であったのですが、それが中国が新型コロナウイルスの封じ込めでロックダウンした際、港湾の動きも止まりますから、その部品は入手不可になります。そうなると、その部品を使っているシャワートイレ(洗浄便座)は製造できないことになります。そうして、シャワートイレ(洗浄便座)本体も入手不可能になるわけです。中国のロックダウンが解除されるまで、待つということになります。
このようなことは、ほとんどの建築資材で実際に起こっています。シャワートイレ(洗浄便座)を照明、エコキュートに書き換えても、同じ事態が起きています。
加えて、物流コストが非常に高くなっています。それによって、大体の製品のコストはアップしています。
私どもが知るかぎりでも、次のような建築資材の価格上昇があります。
- ガルバリウム鋼板(屋根などに使用)
- 銅(電気配線に用いられます)
- 塩化ビニール(配管などに使用)
世界的に住宅需要が急増しているなかで、ありとあらゆる建築資材が値上がり・価格上昇しています。これら以外にも、価格上昇していくであろう建築資材は多いです。
ロシアが経済制裁を受けたことの影響
ロシアがウクライナに軍事侵攻しまして、世界的なニュースになっておりますが、それが住宅の価格にどのように影響するのでしょうか?
鍵となるポイントは2点あります。
- ロシアから日本は木材輸入を多くしている(輸入量では第2位)
- エネルギー資源が全世界的に高くなる(石油・天然ガス供給量が多い)
ロシアから日本は木材輸入を多くしている(輸入量では第2位)
まず、どのようなご想像をされているかは存じ上げませんが、日本はロシアから木材を輸入しております。それもたくさん。
木材輸入ランキングでは第一位はカナダです。そして、第二位がロシアになります。
主にどのような種類の木材かというと、合板に使われる木材が多いです。もちろん、構造材などの主要な木材を輸入しているのもあるのですが、メインな使用用途としては合板になります。ほかにはオークのフローリングなどもありますね。
それで合板用途の木材輸入がストップしたり、供給量が減るとどうなるか、と申しますと、「家が建たない」か「住宅価格が上がる」か、になります。
「合板って何?」と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、薄い木材を貼り合わせた板になります。それでこれがどういう位置づけかと申しますと、「合板がないと、現代的な家は建たない」です。
高気密高断熱住宅のような現代的な家づくりをする上で、構造用合板などは欠かせません。とりわけ、耐震等級3を当たり前として家づくりをしている住宅会社・工務店は合板なくして、住宅建築はできないと思います。
それで供給量が少なくなったところで、需要量は変わりませんので、価格は上がります。住宅価格も上がるわけです。
エネルギー資源が全世界的に高くなる(石油・天然ガス供給量が多い)
さらにロシアはエネルギー資源が豊富な国として有名です。具体的には石油(原油)や天然ガスです。
天然ガスに至ってはEUに対して、かなりのシェアを誇っており、多大な供給をしています。
これはどういう意味かと申しますと、ロシアへの経済制裁でエネルギー資源がこれまでより入手のハードルが上がります。それはつまりは価格上昇ということです。
電気を生み出すのに天然ガスを使用したりしていますから、電気代のようなインフラコストが高くなり、また、建築資材を作り出すうえで原油は欠かせませんから、原油価格上昇によって価格上昇します。
もはや住宅業界はみな、涙目です・・・
半導体不足も大きい
昨今、有名になってきてはいると思うのですが、「半導体不足」の影響も大きいです。
半導体不足の原因は大きくは前述の通りで、新型コロナウイルスに起因するものが大きいとは思うのですが、半導体がとても多方面に使用されており、影響が大きいです。
わかりやすい例は「自動車」です。通常の納期2-3ヵ月で自動車が納車されるところが、6ヵ月が普通で、1年先もザラになってきています。部品が同様に供給が減っているのもあるでしょうが、半導体不足の影響も大きいようです。
住宅建築では照明器具なども半導体をよく使うようで、納期がものすごく長いです。欠品も多いですし。
注文してから、半年待ちで納品という照明も多いです。
実際に私に起きた出来事
- 2021年12月上旬に照明器具を注文
- ある照明メーカーはほぼ欠品
- 在庫のある照明メーカーに注文が集中
- 一部が中国生産でロックダウンにより商品が入らない
- 2022年3月18日時点で納品予定が4月26日(延期可能性あり)
一般的な住宅の建築工期は6ヵ月程度と思われますから、契約からきちんと注文したというきちんと正確な流れで仕事をしてたりしてます。
大手住宅資材メーカーの値上げラッシュ
さて、最後に大手住宅資材メーカーの値上げラッシュの実例をご紹介してから、終わりとさせていただきたいと思います。
TOTOの値上げ
まずはTOTO。
ユニットバスが6-20%程度値上げはなかなか大きいですね。
LIXIL(リクシル)の値上げ
次にLIXIL(リクシル)。
トイレが2-33%、ユニットバス4-39%がなかなか大きいです。
何がすごいかというと、これは再値上げなのです。
少し前にも値上げしていて、さらに再値上げなので、すごいです。
YKK APの値上げ
住宅の窓サッシメーカーと言えば、LIXIL(リクシル)とYKK APが二大巨頭で寡占しています。
そのYKK APが住宅用商品の値上げ10-12%です。
インパクト大きいです。
選択肢は「予算を上げる」か「工事内容の見直し」か
以前の記事でも同じことを申し上げました。
住宅建築の価格アップは避けられません。
そういった場合の選択肢は2つ。
- 予算を上げる
- 工事内容の見直し
予算を上げる
住宅建築にかかる総予算は「住宅ローンの借入上限」+「自己資金(親からの援助含む)」になります。
この総予算において、上限まで達していない保守的な予算計画を考えている方であれば、住宅ローンの借り入れ金額を上げるなどのかたちで、予算を上げることが可能でしょう。そういうかたちでの対応がよいかと思います。
工事内容の見直し
工事内容の見直しは合理的なコストダウンです。
たとえば、30坪で計画していた家を28坪にするとか、住宅設備のグレードを落とすとか。そういうかたちで、ダウングレードしたり、小さくコンパクトな家にすることで、合理的なコストダウン・工事内容の見直しをすることが考えられます。
まとめ
本質的には新型コロナウイルスに起因する住宅価格の上昇が大きいと思います。
そこからのロシアへの経済制裁での価格上昇圧力。
これらの価格上昇圧力はなかなかに大きく、今後どうなるかはわかりませんが、すぐに値下がりして落ち着くようには思えません。
住宅業界の人はみな、涙目でしょうけれども、日々奮闘しております。
今後の動向も不透明ではございますが、これからも迅速な情報提供をしてきたいと考えております。
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