高気密高断熱住宅

省エネルギー住宅の快適な暖冷房手法【2024年11月・新住協 九州研修会】

2024年11月5日(火)、福岡市のウッドワンショールーム会議室にて、新住協 九州研修会を開催しました。

参加者は15名程度、また、全国からのオンライン参加者(zoom参加)はなんと50名を超えるというセミナーになりました。

空調関係についての掘り下げた研修会が全国で初めてぐらいだったからみたいです。

省エネルギー住宅の快適な暖冷房手法

エアコンは暖房も冷房もできる便利な設備です。しかし、温風・冷風による暖冷房には欠点も多く、快適な空間を創るには工夫も必要です。

断熱を増やせば、冷房エネルギーは減る。冷房負荷が減る。

高性能(高気密高断熱)住宅で、冷房エネルギーが増える要因は中間期に窓を閉め切ったままにすると、室内が暑くなることになります。通常は窓を開けて換気したり、涼しい空気を入れるようにするので、それをしないと冷房エネルギーが増えてしまうということがあります。

冷房設備容量の計算の考え方


冷房設備容量については、暖房のBIS計算式のような簡単に目安が求められるものはないそうです。そのため、暖房設備容量計算の考え方をベースとして独自に設定したそうです。

冷房は暖房とは異なり、負荷のピークは日射や湿度の影響を受けるため、気温・日射量のそれぞれのピークからは判断できないことになります。

そこでQPEXで11-15時の冷房負荷を拡張アメダス気象データの設計用気象データを用いてソフト内で計算し、ピーク負荷を確認します。この計算のピーク負荷は年間の最高負荷ですから、これを設備容量とするには大きすぎる数値になります

そこで各地域の頻度20%を除く負荷とピークの負荷の比率を確認すると、ピークの80%前後の負荷が頻度も80%程度となる傾向を得たそうです。

  • エアコンが大きすぎないよう注意が必要。
  • 高断熱住宅では全て6畳用で十分。
  • エアコンは能力の50-70%ぐらいの運転が一番効率が良い。
  • 1-3台を上手に運転して負荷の季節的な変動にも対処できるように設置することも重要。

例として大阪における120平米モデル住宅の場合

省エネ基準住宅/Q値:2.607・UA値:0.853 暖房設備:4.733kW/冷房設備:4.897kW
Q1.0住宅レベル-1/Q値:1.462・UA値:0.512 暖房設備:2.418kW/冷房設備:3.548kW
Q1.0住宅レベル-2/Q値:1.267・UA値:0.448 暖房設備:2.021kW/冷房設備:3.305kW
Q1.0住宅レベル-3/Q値:1.077・UA値:0.386 暖房設備:1.627kW/冷房設備:3.066kW
Q1.0住宅レベル-4/Q値:0.815・UA値:0.284 暖房設備:1.095kW/冷房設備:2.494kW

エアコンによる暖冷房の特徴

寒冷地では、どの暖房方式が良いか色々試みられてきたが、温暖地ではエアコン1台で暖房・冷房の両方が可能になるため、エアコンしか考えられない状況がある。

エアコン暖冷房の長所・メリット

  • エアコン一台で暖房、冷房の両方が可能になる
  • ほとんどの機種が壁掛け式なので場所を取らない
  • 熱源が電気のため、ソーラー発電と相性が良い

エアコン暖房の欠点・デメリット

  • 冬期は外気温度が低く、エアコンのCOPが低下して、2.5-3.0ぐらいになる
  • 温風の吹き出し温度が低いため、風量を大きくする必要があり、これが人間に当たると不快になる
  • 設定温度に近づくとエアコンの運転は止まるが室内機は運転を続け、室温空気が吹き出し、人間に当たると寒く感じる
  • 完全に下向きに吹き出して温風が床を流れるのが理想だが、これを実現できる機種は高価である

エアコン冷房の欠点・デメリット

  • エアコンの冷風により、冷えすぎから冷房病になることも多い
  • 高性能住宅では、冷房負荷が小さくなるが、エアコンが大きすぎ、運転時間が少なくなり、除湿が足りなくなったり、消費電力が大きくなる

床下エアコン(基礎断熱住宅):壁掛けエアコンによる床下暖冷房

壁掛けエアコンを床下に半埋め込みとして、床下に温風、冷風を吹き込む、いわゆる床下暖冷房である。

基礎断熱住宅の場合は、1-2階にそれぞれエアコンを設置して、床下暖冷房を行う。暖房は快適だが、冷房では足が冷たくなるという住み手もいる

床下エアコン(床断熱住宅):壁掛けエアコンによる床下暖冷房

床断熱住宅では2階床下をチャンバーとして、2階と1階に吹き出すことで、更にシンプルにローコストに全室暖冷房が可能になる

この場合、吹き出しガラリにはブースターファンを併設するが、暖房時は1階天井のファンのみ運転し、冷房時は2階のファンのみ運転する。軽い温風が天井から床まで届くように、また重い冷風が床から天井まで届くように、補助ファンとして使っている。

エアコンのファンは、ラインフローファンで圧力があるので、エアコンまわりを気密化し、エアコンの吹き出し圧力で十分な風量が確保される。エアコンの風量はマニュアルで中以上にセットする。

床下暖房・床下エアコンの問題点

壁掛けエアコンを床下暖房として使う方法は、結構普及してしまったが、問題も多い。

  1. このような使い方をメーカーも認知しだし、ほとんどのメーカーが保証の対象外と表明している。
  2. エアコンの温度センサーが、室内機の側面または下面についていて、正常に動作しない。これを避けるために、センサー部を持った有線リモコンに対応した機種を選ぶ必要があるが、少ない。
  3. 床下に冷風を直接吹き込むため、床下での結露発生を防ぐ措置が必要になるが、ここでミスをして結露のクレームも多い。

以上から、この手法はあまり勧めたくないと考える。

まとめ

床下エアコン・床下暖房などの技術開発を導いてきた鎌田紀彦先生による省エネルギー住宅の快適な暖冷房手法のセミナーでした。

前提の知識がそれなりに要求される内容でしたが、省エネルギー住宅をより快適に住むために必要な知識を多少なりとも身に付けられたかな、と思います。

ありがとうございます。

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