脇田山荘は洋画家・脇田和氏のアトリエ兼居宅です。
設計者は吉村順三先生。
脇田山荘は書籍によって名称が異なっておりまして「軽井沢の山荘B」「脇田邸」「軽井沢のアトリエ山荘」などの呼び名があります。通称は脇田山荘ですね。脇田アトリエ山荘とも呼ばれるようです。
脇田山荘の建築について
軽井沢の駅からそれなりに近くに位置します脇田美術館。こちらは洋画家・脇田和氏の作品を所蔵・展示する個人美術館です。
最初に脇田和氏のアトリエ兼居宅である脇田山荘が建築されまして、その後に脇田美術館が建築されたという経緯です。
脇田美術館は通年一般公開されているのですが、そのアトリエ・居宅である脇田山荘は通常非公開。
一定期間のみ予約制で一般公開されまして、その公開に合わせて見学させていただきました。
- 外部リンク:脇田美術館
脇田和氏と設計者・吉村順三さんとの関係
脇田和氏は設計者・吉村順三と東京藝術大学の教授同士という関係で、その流れで設計を依頼することに。
脇田和氏の要望は「1年を通して住める家」で「池を眺めることのできる家」だったそうなのですが、現在は中庭になっている「池(沼?)」は建築の基礎工事中に水が抜けてなくなってしまったというエピソードで苦笑いです・笑
脇田山荘の概要
くの字形をした建物で、東西に広く、1階をRC(鉄筋コンクリート)造としたピロティ。2階をメインのスペースにしています。
1階をRC(鉄筋コンクリート)造にした理由はデザインというよりも、軽井沢が環境的に湿度が高く、積雪もするので、湿気を避けるために1階をRC(鉄筋コンクリート)造に。2階を木造にしているという混構造になります。
ちなみにこれは設計者の吉村順三さん自身の軽井沢山荘と同じ構造になります。昭和45年(1970年)に建築ということですから、50年以上前に建築された建物となります。
これほどまでに時間が経っているのに、今なお美しく感じるのは「タイムレス」なデザイン、飽きのこないデザインだということでしょう。もちろん、きちんとメンテナンスもされているようにも思います。
外壁は下見板張りでして、実際はメンテナンスと言っても外壁塗装をしたくらい、、、と聞いたような。。。
東側にリビング、寝室等があり、西側にアトリエと書斎があります。
現在も、脇田和氏の長男である脇田美術館館長が軽井沢に滞在する時は使用しているそうですね。
脇田山荘の詳細
作品名:「脇田山荘(軽井沢の山荘B・脇田邸・軽井沢のアトリエ山荘)」
- 1970年竣工
- 鉄筋コンクリート造一部木造2階建・鉄板葺
- 敷地面積 1,914.9m2
- 建築面積 167.7m2
- 延床面積 219.2m2
- 2021年2月に国の登録有形文化財に指定
住所・アクセス方法
長野県北佐久郡軽井沢町大字軽井沢字野沢原1243-14他
脇田美術館にあります。
外観・中庭スペース
まずは外観。
中庭スペースから見ます。
前述の通り、外壁は杉板の下見板張りで塗装されています。メンテナンスとしては塗装はしているようです。
軽井沢という環境から1階がRC造ですが、実質的には「平屋」な家ですね。
もちろん1階部分で、演奏会やバーベキューといった活用はされているでしょうが、生活や創作活動はワンフロアで平屋的な生活スタイルでしょう。
脇田山荘の1階部分
1階はボイラー室と作業室があるくらいです。
ピロティになっていて、吉村順三自身の山荘(吉村山荘)も同様なのですが、暖炉のようなものあります。
吉村山荘の場合も、ピロティで暖炉を使って演奏会をしたり、人が集ったりしていたようですので、同じような用途でしょうか。
吉村順三設計の温熱環境
このボイラー室であたためられた空気を2階の床下を通してから、ソファ背面部分から出すことで、暖房システムを構築していたそうです。
広義の床暖房システムですね。
この快適性を求める空調システムは吉村順三設計の建築物でよくみられますが、所員だった奥村昭雄さんが主体として動いていたようですね。奥村昭雄さんは結果として、OMソーラーを設立することになりますから、それにつながる流れになります。
ちなみに、このボイラー室からの空調システムですが、現在でも使用することができるようなのですが、燃料代が非常にかかるので実際は運用されていないそうです。
結局はランニングコストがかかる空調システムはどんなに快適でも、利用されなくなるものだということを感じさせます。
玄関ホール
玄関ホールはコンパクトで、人を導くような作り。
シンプルでかつ、素朴な美しさを感じさせます。
リビング
やはりメインはリビング。
大開口の窓まわりは、とても気持ちの良いものです。
また、内障子を締めた時の光と影の美しさ、落ち着くリビングのソファとダイニングのソファの設計、美術家の脇田和氏のセンス、きっと火が入ると本当に落ち着く、惹かれて、何時間でもそこに居てしまうであろう、暖炉、全てが素晴らしかったです。
床は脇田和氏が選んだカーペット
床は建築主の脇田和氏が選んだと言われるカーペット。そんなに高価なものではないようです。
内壁は漆喰。
天井は勾配天井になっていて、杉材な気がしますが、唐松(カラマツ)とも言われています。
暖炉がいい
なにより、暖炉があるのがいいですね。
吉村順三さんはファイヤプレースを重視していて、暖炉をほぼほぼ設置していたそうですが、この暖炉があるからこそ、空間が引き締まり、暖炉があるからこそ、居場所がある。そんな位置づけで、すっごいいいです。
また、南側の庭を眺める上で、視界に入る景色を計算して軒の出を決めたそうです。
ダイニング
ダイニングもリビングにつながっていて、とっても素晴らしい。
ダイニングスペースはソファベンチと変形のテーブル、そしてベンチという構成。ソファベンチでのダイニング空間は落ち着く空間で素晴らしい。
アトリエスペース
アトリエスペースは創作空間と言いますか、仕事部屋といった印象。
きちんと仕事ができるように本棚や天井高さなどを考えて建築されています。
感想
吉村順三さんの設計で体験した建物は全て素晴らしいという感想しか出ませんね。
脇田山荘ほど、大きな空間ではなかったですが、俵屋旅館や文珠荘、大正屋の客室も同様に素晴らしかった。
旅館は住宅とは異なるところが多々ありますから、空間として素晴らしくても、居宅としては難しいところがあるでしょうが、脇田山荘は本当に個人が居住するための建築物・住宅であるわけですから、リアリティを持って体験いたしましたけれども、最高レベルですね。
最後に、脇田山荘の感想として、でんホーム代表 藤本香織の感想です。
吉村順三先生の実作が期間限定公開されてたので見学に訪れました。
52年経った建物と思えない、とてもモダンで洗練された空間です。脇田和さんのアトリエとして建築されました。
気持ちのよい南側の大開口からは気持ちの良い林が広がります(建築後に向かいに美術館が建てられた)。
緩やかな勾配と板張りの天井
暖炉
ゆったり作られた造作ソファ
変形のダイニングエリア
引き込みできる内障子
手作りの照明
吉村先生の残されたいくつもの設計思想を確かめた実感とまだ知らなかった新しい発見と。
沢山胸に抱えて、また福岡で新たに住宅建築と向き合おう。
何年経っても美しい、
何年経っても愛おしい、
何年経っても心地よい、
そんな住宅建築をしていく事が私の生涯の夢で目標です。
– 藤本香織
「家づくりって、どうすればいいの?」「家づくりの基本は2つだけ」「地震で壊れる家、壊れない家の違いは何ですか?」「地震で壊れない家を建てるには?」「夏涼しく、冬あたたかい住まいにする方法」「断熱材について知っておくべき2つのポイント」「住宅ローン、借りられる人、借りられない人」「ブラックリストに載ると、住宅ローンNG?」「住宅ローンは固定金利・変動金利。どちらがいいか?」・・・
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